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出会いはホーチミン 

2010.05.18

         
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     深夜をまわってからふと思い立って小さな緑の芽の写真を撮った。

     一週間まえに種をまいたコリアンダーの成長が、ここ数日の陽気で加速度を増していて

     プランターをのぞくたびに笑ってしまうほど面白い。

     朝になってこの写真と比べてみれば、成長ぐあいがはっきりわかる、そう思って撮ってみた。


     
     香菜 = コリアンダー = シアンツァイ = パクチー の洗礼を初めて受けたのは、

     ずいぶん昔のことだ。

     二十歳そこそこ、東京、日本橋のとある旅行会社で嘱託勤務をしていた頃。

     ある朝出社すると、机の上に大きく新聞を開いていた同僚がふいに顔をあげて

     「ベトナム、行かない?」と言った。 彼女とは特に親しかったわけでもないのだが

     私は「行く!」と即答した。 自分でも少し、びっくりした。

     特別その国について興味があったわけでもない。 その当時ベトナムはおそらく一般の

     観光客を受け入れていなかったと思う。 それが未知からの甘い誘いのように思えて、

     その旅が民間交流を目的としたNGOの主催する船旅だとか料金がいくらだとか、

     期間はどれくらいとか、そういうことを何も聞かないうちに本能の赴くまま飛びついた。 


100518-2  


     あれは9月の初めだったか。 同僚と共に神戸から出港し、数日間を船の上ですごしてようやく

     文字通り地に足をつけてホーチミンの町を歩くあいだ中、私はまるで自分が有名人になったか

     のような錯覚に陥っていた。

     360度見回す限り、こちらからは遥か遠く米粒大にしか見えない人を含め、視界に入る

     ひとたちみんながみんなこちらを見ている。 これはなかなかしんどいものだった。

     だが仕方ない。 こっちがあっちを見るのが初めてなら、あっちにとってもこっちの存在は相当

     珍しい時代だったのだ。

     そして無論、現地の食べ物は外国人の舌になど合わせていないから一切容赦がない。

     現地の人たちの口には入らないほどの高級な食事だと容易に想像のつくホテルの夕食の

     豚肉にも、 サラダにもチャーハンのようなものにも、すべて同じ匂いがした。

     それは衝撃。 異臭といっても過言ではなかった。

     その強烈な匂いの元が何なのか息を殺して注意深く観察すると、すべての料理に

     同じ小さな緑の葉っぱが乗っていた。 それが原因であることに気付いた私は、

     お行儀よく添えられているものはもちろん、ご丁寧にも刻まれてまぎれこんでいる細かな

     緑のかけらも注意深くひとつずつ取り除いてから、用心深く口にした。 しかし、それは無駄な

     抵抗だった。 青臭い匂いは料理だけでなく、周りをとりまく空気にもしっかり沁みこんで

     濃くなまぬるく漂っていた。 

 

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     ボトルのコーラも知っているコーラ味ではないし、そう思ってしまうとペットボトルの水すら

     青臭かった。 逃げてばかりではダメだと思い直して、翌朝に町の露天ですすった

     葉っぱてんこもりのフォーもなかなかなじめず、食べ終わったその足でとなりの 
     
     露天で初めて見るフルーツを買い、渡る人の誰もいない橋の上に座って足をぶらぶらさせながら

     ほおばった。 むせるように甘いライチの味に、違う国に来たんだなぁと改めてしみじみしていると、

     いつのまにか現地の人たちにぐるりと取り囲まれ、友好的に、観察されていた。

     あわててファンサービスに不慣れなデビューしたての芸能人のような笑顔を

     振りまきながらその場を後にした私たちが振り返って見たその橋は、今にもくずれそうな

     ボロボロな、土でできた橋だった。

 
   100518      
 
     

     そんな漫画みたいな旅をしているあいだは香菜のことなど一瞬たりとも美味しい、また食べたい

     などとは思わなかった。 その葉の名前を知ったのさえ、日本に帰ってしばらくしてからのこと

     だったのだが。

     なんということか、今や私は、香菜が大好物なのだ。 どれくらい好きかと問われると

     (そんな質問は実際誰もしないのだが)、いつもこう答えることにしている。

     「添い寝してもいいくらい、好き」。
 
     何がきっかけだったのかそれは全く覚えていないのだけれど、以前「異臭」と呼んだキツい匂いは

     今や「身体の中を浄化してくれるようなかぐわしい香り」に昇格している。 あれからどれほど

     積極的にタイ料理やベトナム料理を食べたことか、数えることができないくらいだ。

     大好きな大好きな、香菜。 でも残念なことに私の住む町では、手に入れることはできない。

     だから種から育てて、その成長を日々楽しみにしている。


     ふと、あの日、旅の途中から友人となっていた元同僚の提案で

     ホーチミンからお互いの日本の住所にあててハガキを出していたことを思い出した。

     そんなことをしたことも懐かしくて照れくさい。 若かったなぁ。

     改めて見たその消印の古さにおののきながら、そして
 
     「わたしはいまホーチミンにいます」

     なんてコリアンダーばりに青臭い言葉にも照れながら、葉っぱが育ったらまずはひとくち口に入れ

     そうして甘くてすっぱくて辛いトムヤンクン。 そうしようと決めている。

 
     
      
        
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コメント

 

実は先週、ホーチミンへ行っておりました。
拙者は5度目に訪越でしたが、妻は初めてでした。
新婚旅行は30数年前に、シンガポールでしたから、
シルバー旅行のようなものでした。
昔からビールのおつまみに、パクチーを皿にてんこ盛り、
とオーダーして居ましたから、ハートロッカーには香草で
埋め尽くしてくれと懇願しております。

 

東戎さん
すごい偶然ですね。ホーチミン、今はどうなってるのか興味あります。
それにしても男性でパクチー大好きって珍しい!
なんてストライクゾーンの広い東戎さん。すごいわー。
でもハートロッカー、香草で埋め尽くしてしまったら、近寄ってくれる人減っちゃいますよ!
それはどうぞ考え直してみてください。汗

 

その船旅は知っていたけど、詳しい話を聞く機会がなかったので
(あまり会わないので会うときには他にも話がいっぱいあるからかなぁ?)
旅の一部だと思うけど知れてなんかよかった。
で、私は、未だコリアンダーを知りません。
添い寝したいくらい好きなもの・・。いつか出会えるかな。


 

食するのでは、パクチーは大好きですが、
香りは断然!ユーカリです、40年来この香りが好きです。
私事ですが、娘たちに石の墓には入りたくないので、
海に散骨と一部はユーカリの木の下に撒いて下さいと
伝えてあります。

 

しな
いろいろ覚えててくれてるんやねぇ。。アリガタイ。泣
生コリアンダー、都会ではスーパーの野菜売場に置いてあるよ。
タイ料理食べにいったら、嫌でもついてきます。笑
たぶん最初は「うぇ~~」ってなると思うので、要注意。笑
いつか出会ったら、感想教えて!


東戎さん
わー、びっくり。私もユーカリ、大好きです。
ドライのものを部屋に飾ることは、あんまり好まないのですが、
ユーカリの葉っぱは別。ふわっと流れてくる香り、いいですよね!

 

う~ん、このブログはパクチー好き率が異様に高いな…- -;
私はその他大勢と同じくまったく受け付けません。
なんかガソリンを食べたみたいな味が…(って、ガソリンは味見した事ないけど)オイオイ・・ (;´д`)ノ

 

sumi-chan
パクチー、きっと日本人の9割以上は受け付けないと思いますよ。
私もなんでこんな好きになったか、そのきっかけを思い出したい。笑

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大阪→サンフランシスコ→東京→札幌→東京、2008年秋から岩手→2013年春、第二の故郷へ

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