風のいちにち

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ひそかな試み 

2009.10.30


   20代半ばころに同僚だったマキちゃんは、よく花を飾っていた。

   職場の小さな冷蔵庫の上に飾るため、隣のビルの小さな花屋さんから季節の花を一輪だけ

   買い求めて、にこにこと休憩からもどってくる。 職場のみんなを喜ばせるためというよりも、

   自分が一日を過ごす場所に花があること自体が好きだったのだと思う。 そういうところが素敵だった。

   自分で自分のために花を飾る = 素敵な女の子という私のイメージは、基本マキちゃんに由来する。

   私にはそんな素養が全くなかったので、よけいに羨ましく思えたのかもしれない。


道端


   何年かして職場も変わり、マキちゃんと会うこともなくなってだいぶ経ったある日のこと、何故か私は

   唐突に、あのころのマキちゃんに倣えば自分も少しは優しい性格になれるのではと、ちょっと花でも

   買ってみるかと思い立った。

   生活の中で少しずつ仕事の比重と責任とが増えていき、自分の生活、性格は、そういう潤いというか

   優しさみたいなものが決定的に欠けていると、私ははっきりとわかっていた。

   今思うと、ムダな努力というか、ミョーなことを思いついたもんである。 でも自分のなにかを変え

   なければ、と当時はそれなりに真剣だったのだろう。 とにかく私は、仕事帰りの花屋さんで一週間に

   一度、花を買って帰るというかつて今までとったことのない行動パターンを試みることにした。

   そして実際始めてみると、それは気負っていたほどのことでもなんでもなかった。

   夜遅く部屋に戻り、食事をする前に買ってきた花束をほどいて、一輪ずつ茎の長さを調整して

   ガラスの花瓶にさしていると、なんだか少し人間としてのランクが上がった気がした。

   そういえば、TVや雑誌に載ってるオトナの女性ってこんな感じ~?などと、悦に入った。

   しかしそれは完全な思いすごし、自己満足であった。 悲しいことに、いつも別の自分がそんな自分を

   冷ややかに見ているのがわかっていた。 なんか無理してない?と。


   ある時、海外のインテリア雑誌に載った、淡いピンク色のチューリップが花瓶からたわわに首を

   もたげている写真を真似て、奮発してチューリップを何本も買ってきたことがある。

   写真と全く同じように四方に首をたれて生けたピンクのチューリップを見て、私はよしよしと満足した。

   美しい。 こんなにも美しいものが自分の部屋にあるなんて、私も案外やるじゃないか。
 

花

 
   ところが翌朝見ると、陽の良く当たる部屋の中で、なんとチューリップはすべて見事にまっすぐ

   陽の光をめざしてひたすらその首を上にのばしていた。 昨日まであんなに可憐だった花が、

   直立不動、まるで上を向いたペンギンの群れである。 今思うとそれは当たり前で、花に罪はない。

   ほとんど笑い話だ。 けれど私は落胆した。 なんだか腑に落ちなかった。

   そんな失敗なのかなんなのかわからないこともあったのち、ひそかな試みはいつのまにか

   終わりを迎え、私はもとの生活パターンにもどっていった。 

 
   今でも時々、マキちゃんのことを思い出して、忘れかけていた劣等感のようなものが疼くこともある。

   つつましく花を買い、自分の部屋にそれを飾る。 ステキだなぁ。

   けれど、私にとって花は、誰かのことを思いながら、その人のために選ぶ時間がいちばんいい。

   飾るなら、大切なひとが持ち帰ってくれた、大切な友人が選んでくれた花だけでいい。

   今はただ、道端に荒々しく咲き乱れる花に、ふむふむと感心しながら通り過ぎる日々に落ち着いている。

   

   

   

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コメント

 

写真は素晴らしい、主題アイデアも良し、文章も洒脱だ。
ここまで、隙が無いと、逆に粗探しになってしまいます。

人間の素晴らしい点は、花を愛でることです。
東洋的な発想は、花は植えて観賞するか、活けるものです。
西洋的な発想は、花は植えて観賞か、花瓶に活けるか、花束にするかです。
西洋的発想は、この花束が一番、エレガントなのです。
人間のエゴで、花の命を人間の一瞬の喜びの為に、命を絶つからです。
東洋的な発想の道端に荒々しく咲く花に、ふむふむと感心して愛でるのが、
私は一番エレガントだと思います。

 

私はそれが、グリーンだったわ。でも、かなしいかな、私には”みどりの指”は
なかったの。出張が続いたり、夜遅くなると、自分の面倒でせいいっぱい。
はっと気がつくと、ごめんよ(ρ_;) となってたこともしばしば。
そすると、”みどりの指”どころか、廻りをみる余裕がなかったんやと。
それからはムリしないように。
今のわたしにとっての、オハナは、おはなでも、”羊毛とおはな”の、やさしい歌声です。

 

寒太郎さん 隙があるくらいのほうが余裕あっていいかな、と思います。笑

cooちゃん ポトスを枯らすオンナですよー、私。笑 そやねー、オハナって人それぞれでいいんやねー。うんうん。

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愛媛生まれ
大阪→サンフランシスコ→東京→札幌→東京、2008年秋から岩手→2013年春、第二の故郷へ

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