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ポテトチップスに憧れて 

2009.12.18


     幼いころの体験からか、大人になってもなかなか手を出せないものは誰にでもあると思う。

     私にとってのそれは、ポテトチップスだ。

     昔々、「100円でカルビーポテトチップスは買えますが、カルビーポテトチップスで100円は

     買えません。あしからず。」 でセンセーショナルに登場した、あれ。

     初めて口にしたのは、同級生の家に遊びに行ったときだったと思う。

     ガラスのように薄い一枚をそっと指でつまんでおそるおそる口に入れ、ためらいがちに

     歯をたてると、「ぱり」 と小さな音がした。

     当時はまだ質より量の時代だったから、そんな繊細な質感を持つ食べ物は私にとって、

     いや多くの人にとって新鮮なものだったのではないだろうか。


ポテトチップス

           
          
     だが私の母は、断固、ポテトチップスを買わなかった。

     子供にお菓子を与えないというポリシーがあったわけではない。 若い時分にアメリカ人の家庭で

     お手伝いさんのようなことをした経験から、その年代の人にしては珍しくパイやクッキーを時々

     作ってくれた。 だから洋食系は得意という自負があったのだろうか、それくらい作れる、

     ポテトチップスなど100円を払うに値しないと結論づけたのかもしれない。

     私が友人の家で口にしたポテトチップスを忘れられずに、スーパーの棚の前で立ち止まるたびに

     母は 「うちで作るから」 と、私の沈黙の訴えをしりぞけるようにその場をすたすた通り過ぎた。

     100円の壁はいつもいつも高かった。

     そうやって私の中で、 ポテトチップス=贅沢品 というイメージが強烈にインプットされたのだ。


     しかし母の手作りポテトチップスは、努力の甲斐むなしくいつも残念だった。

     その色はところどころ焦げていて黒に近いこげ茶色だったし、見た目も油が浮いていて

     小さくかたく丸まっていた。 下にひいた広告の裏面の白には黒く油のしみが広がっており、

     そして何よりも噛むとガリッと音がした。 

     毎回、「ちがうんだよなー」 と思いながら、うつむきかげんで黙って食べていたことを覚えている。

     今思えば4人の子供を育てながら仕事もしていた当時の母には、一見ただのジャガイモの薄切り

     を揚げただけのものに毎度毎度試行錯誤するような、時間の余裕も心のゆとりもなかったのだ。


ポテトチップス2

  
     
     そういえば初めて親元から離れて大阪の短大の寮で暮らしていた時、ふたつ隣りの部屋に

     住む友人が、恐れ多くも20センチ四方くらいのスペシャルバージョン箱入りカルビーポテトチップスを

     抱えて、深夜帰ってきたところに偶然出くわしたことがある。

     「うわー、ブルジョワー!」

     心のなかで嫉妬心に満ちた声をあげていた。 

     だが私のそんな思いを知る由もない、育ちの違いというのだろうか、意地悪な独占欲などきっと

     抱いたこともないであろう彼女が 「一緒に食べよ!」 と誘ってくれた時には 、まさに天にも昇る

     気持ちになった。

     私はいそいそと彼女の部屋におじゃました。 こんなこと一生に一度かもしれないのだ。

     そして 「やっぱりポテトチップスには牛乳だよねー」 という彼女と

     ほんとは水がいいんだけどなーと思いながら深夜にたんまりポテトチップスを食べた私は、

     当然のように翌朝ひどい胃もたれになっていた。

     満足感など微塵も残らず、ただ大切なものを乱暴に扱ってしまったような後悔と、こみあげる

     気持ち悪さを抱えたまま、私は前のめりで自転車を漕いで学校に走った。


     とうに大人になった今でも、今日は贅沢してもいいかなという日にだけ、色んな種類の

     ポテトチップスがずらりと並ぶ棚の前に立ち止まることがある。

     100円ちょっとの袋菓子の前でいつまでも動けない私に、たけのこの里=贅沢品の夫が

     背中を押してくれ、ようやく選んだ小さな袋をひとつ、かごに入れる。

     レジを済ませてようやく落ち着いた私を見て満足げな彼はしかし、私がまだ最初に出会った

     憧れの極みの、あのポテトチップスを今まで一度も買っていないことに気づいてはいないのである。
     
     

     

     

     

     

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コメント

 

不二家のネクター、不二家のストロベリーチョコ…
憧れの高級品として燦然と輝いていましたなぁ…今も製造されているのかしらん?
あと、恐れ多くて今だに手が出せないもの
①縁日の綿菓子
②冬の風物詩 石焼き芋
子供の頃の刷り込みって強力ですよね。

 

sumi-chan ネクター!!あれは、夢の味だったわ。笑 もうないのかなぁ。 恐れ多くて手が出せないもの、結構あるねぇ。 そのSTORY、聞いてみたい。

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愛媛生まれ
大阪→サンフランシスコ→東京→札幌→東京、2008年秋から岩手→2013年春、第二の故郷へ

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